日経流通新聞(1999年12月9日)

パリ風のクスクスが自慢

「他店のどこにも負けないおいしいクスクスをお出しします」と自負するシェフの酒井一之さん(57)。 東京・渋谷のフランス料理店「ウ゛ァンセーヌ」のシェフとして二十年間活躍してきたが、今秋に独立。 地下鉄赤坂見附駅から徒歩一分の赤坂東急ホテル横に開店させたのが「ビストロ・パラザ」だ。

クスクスはフランス人の大好きな料理のひとつである。もともとは北アフリカの伝統的な料理で、 乾燥させたゴマ粒状のセモリナ粉を蒸して、シチューやソースをかけて食べるのが一般的。 同店ではパリジャンが好むしっかりしたソース仕立てのクスクスを作り上げているのが特徴だ。

酒井さんは渡欧歴十五年。フランスを中心に、ホテルやレストランでの修行経験を持ち、帰国後初めて日本にクスクスを紹介した。 その修行時代に食べた思い入れの深い料理が「パラザ」のメニューには並ぶ。ちなみにクスクスは三種類。若鶏(どり)と 野菜のクスクス(二千六百円)、仔(こ)羊の串(くし)焼きや若鶏のローストを添えたクスクスにシチューをかける クスクスロワイヤル(三千二百円)、鮮魚のクスクス(二千二百円)。いずれも一人前の値段だが、かなりのボリュームある内容だ。

気取らない温かさにあふれた店内



その他、新鮮な血入りのソーセージのブータン・ノアール(千六百円)、田舎風パテとピクルス(千二百円)、 牛の頬(ほお)肉の赤ワイン煮込み(二千六百円)など。昼は二千円と三千八百円、夜は四千八百円と六千円のコース料理がある。 昼間は時間のない人のためのクイックランチ(千二百円)があり、特に周辺の若いOLに好評だ。

ワインも充実しており、五千―六千円台のものが主流。中でもお得なのはハウスワイン(ボトル二千八百円)だ。 もちろんフランス産だが、飲み切れなかった場合は飲んだ分だけ精算してくれる。しかも赤坂の一等地ながらサービス料も取らない。 まさしくビストロ価格で楽しめる店だ。
「伝統的なビストロ料理と、これからどんどん進化する料理に期待してもらいたい」と意欲的な酒井さん。 今のところ開店して三ヵ月弱ということもあり、以前の店からの常連が大半を占める。比較的年齢層は高いが、 夜の客単価は六千―七千円程度となっている。

ガラス張りの店内は気取らない温かさにあふれ、アコーディオンの音色が軽快に流れる。 店名の「パラザ」は「もしかして」「偶然」「不思議な出会い」の意。居心地の良さもあり、 パリの街角のビストロにいるような錯覚を起こさせる店だ。

(レストラン・プロデューサー 河崎妙子)