フランス料理人 シェフ酒井一之の公式サイト
酒井一之 豚料理大全 人気シェフのスパイス術

シェフ酒井一之のおいしい総菜』では、シェフの料理の数々をお求めやすく提供いたしております。
東京たべたべ会、学士會館にて復活!

冬のパリには焼き栗と生ガキがよく似合う
menu
冬のパリには焼き栗と生ガキがよく似合う

あの輝かしかった太陽も姿を隠し、マロニエの葉が散ると、パリはどんよりとした日が続き、短かった夏と秋が過ぎ去った感じでいきなり冬に入ってしまう。 夏の間、歩道にテーブルをずらりと並べたキャフェで、おおぜいの客がおしゃべりに熱中して、のんびりと通行人をながめやりながら、 冷たいビールでのどのかわきをいやしていた風景もがらりと変わり、歩道にせり出た客席はガラスの中となり、あたたかいコーヒーやショコラのカップを両手にかかえ、 間もなくやってくる冬のヴァカンスに話をはずませ、時折り外を寒そうに歩く人をながめやるー。

そんなパリの冬の風物の一つに、焼き栗売りがいる。手押し車へ、ドラム缶を筒状に切ったものに鉄製の大きな鍋を置き、マキをたきながらマロンを売る。 寒い時に、新聞紙に包んでくれるこの焼き栗を買うと、ポケットの中やコートの中でしばらく身体を暖めてくれる。
ナイフでカラに切り込みが入れてあるから、歩きながらでも食べられる。カラは、車道と歩道の端を流れている浄掃用の水に投げると、 下水へと消えてゆく。そして新聞紙はゴミ箱へ。ちなみに私が毎日仕事をしている渋谷の街は、公園や歩道のあちらこちらにファーストフードの包み紙と プラスチックが散乱している。

パリにも、今やハンバーグを売る店が急速に増えてはいるが、やはりパリには焼き栗が似合う。 ところで、マロンとは本来晩秋のパリの歩道に落ちているマロニエの実のことで、これは食べられない。 クリはフランス語で”シャテーニュ”と言う。だから栗色の髪を、ファッションの世界では、シャタンまたはシャテーヌと言っている。

また、フランスのクイは、実が小さく、余り産出もされていないので、あの皆さまにもあなじみのマロングラッセの見事な大ぶりの実や、 パリの街角で売っている焼き栗は、主にイタリアから輸入されている。したがってマロングラッセなどのマロンと言う言葉は、 フランス人にとっていわば外国語みたいな響きを持って聞こえているわけだ。

もう一つの私の大好きな冬の味覚に、生ガキがある。よく『R』のつく月だけしか食べられないと言うが、パリで夏ガキを食べさせる店は、けっこうある。 しかし、味から見れば冬ガキが最高。寒くなってくるとうまさが増してくるから、ここはじっと冬を待つ方が賢明であろう。 夏の間は、テラスに並べられていたイスや、テーブルが片付けられたレストランやキャフェの店頭に、カキ屋さんが店を並べるのが九月からである。 このカキ屋さん、カキむき職人をエカイエと呼ぶ。ブルーのつなぎに上着をはおっただけで、寒中、ナイフを片手に持ち、もう一方の手には、 それも素手でカキを持ち、実に器用にあけてゆく。かき氷の上に海草を敷き、客の注文のあった種類のカキを並べ、レモンをダイナミックに半分に切ったものを 人数分置き、ギャルソンに手渡す。

真ガキには二種類あり、ポルトガル種、フィン・ドクレール種(実はこの種は一時病気で全滅したので、日本の種を輸入し、今日に至っている)、 それから丸く平たく、ちょっとにがくて大人の味のするブロンガキがある。盛りあわされるものは、ウニ、ハマグリ、ムール貝などー。 大皿に盛られたカキは、壮観、見事である。キリッと冷やした白ワインを一杯やりながら、レモンをカキにしぼり、ツルっと口にすべらせる。 海の香りが口中に広がり、無上の幸せを感じる瞬間!エシャロットのみじん切りをワインヴィネガーの中に入れたソースも良いし、 ライ麦パンにたっぷりバターをぬって食べると、カキの生ぐささが消える。

私の店に来るフランス人のお客様は、日本のカキのすばらしさは知っている。だけど日本のレストランではカキを食べないと言う。 なざなら水で洗ってしまって、味も香りもないからだと言う。私の店ではフランスのエカイエがやるように、素手でカキを持ってあける。 カラの中の海水はこぼさず、水道の水で洗うバカなマネは絶対にしない。パリと違うところは、店頭に並べず冷蔵庫に保管しておくことぐらいである。

的矢のカキ、北海道の厚岸のカキ、宮崎の天然ガキ、フランス・ブロン種など、カキ好きの私は、いつも六〜七種類をお客様のために用意しておく。

当エッセイは日清社の「フーディアム誌」に連載された「酒井一之の〈おしゃべり ア・ラ・カルト〉」を転記したものです。よって版権は日清社が保有するものです。








-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

シェフ酒井 - たべたべ会 - ヴァンセーヌ
シェフ酒井のフランス惣菜 - シェフズ倶楽部 - co-beau, inc. - リンク

copyright 1994 - 2008 (c) co-beau, inc. All rights reserved

このページに関するご意見、ご要望、ご感想は まで宜しくお願い致します。
シェフ酒井一之へ直接メールをなさる際は へどうぞ。多忙の為返事が出来ない事がありますご了承下さい。

ヴァンセーヌ、パラザ及び酒井一之に関するページにおける著作権及び肖像権のすべてを(有)ヴァンセーヌ・サーヴィス が保有し、一切の無断転載・複製を禁止します。

リンクはどうぞご自由にお張り下さい。


<< site powered by co-beau, inc.>>